『レトリック感覚』佐藤信夫(講談社)読了

衝撃。

筆者いわく、もともとレトリックは「他人を説得し、言い負かす技術」であり、そこから「芸術的あるいは文学的表現の技術」へと歩を進めた。そして、それらは時とともに軽んじられるようになったが、じつはレトリックにはわたしたちの認識をより正確に記述するための「発見的認識の造形」という役割があったのだ――。

続いて引用。

森羅万象のうち、じつは本名をもたないもののほうがはるかに多く、辞書にのっている単語を辞書の意味どおりに使っただけでは、たかの知れた自分ひとりの気もちを正直に記述することすらできはしない、というわかりきった事実を、私たちはいったい、どうして忘れられたのだろう。本当は、人を言い負かすためだけではなく、こよばを飾るためでもなく、私たちの認識をできるだけありのままに表現するためにこそレトリックの技術が必要だったのに。(p.26)

唖然呆然。まったく筆者の言うとおり。どうしてそんなことを忘れられたのか、自らを省みて、その思慮の浅さに恥じ入るばかり。

さまざまなレトリックについての考察もなかなか興味深いものもあったけど、ある意味上記を指摘した序章1が俺にとってこの本のすべてといっても過言ではないくらい。

名著です。

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