大作。主人公は、武装銀行強盗で逮捕され収監されるも脱獄し、ボンベイに潜む。まずこれが作者自信の実話に基づいてるってところがキャッチーだけど、まあそれはとりあえずは置こう。
俺はこの小説を、ボンベイという街のすべてを飲み込むような混沌と、主人公に襲い来る運命の荒波を重ねることで、人生そのもの、そして愛を描こうとしたものだと捉えた。
それはある種のリアリティ(真実かどうかはおいて、それが感じられるという意味で)のおかげで、迫力を持つところもあった。
ただ、作者が自分を重ねたせいだろうか、退廃的にも高潔にもなりきれない主人公の姿に、エンターテインメントとしては若干の座りの悪さも感じたな。
そして、この本の興味深さの多くを担っているのが、ボンベイとそこに住む人々の描写である。熱気にあふれた猥雑さ。インドに行った旅行者のうちの一部は心底魅入られてしまうという話は聞くが、それがなんとなく判るような気がする。なかなかおもしろかった。
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