『天地明察』冲方丁(角川書店)読了

史実の間を想像で紡ぎ、惹きつける物語とする、まさしく正しい時代小説。

日本史の授業で項目として覚えただけの授時暦、貞享暦、渋川春海がいきいきと蘇り、あまつさえ尊敬する和算の大天才関孝和(俺が持ってるイメージとは違う人物造形だったが)と運命の糸を交わらせるところなんかは興奮を超えて作者に感謝の念すら覚える。

天下の一大事業ではあるが一見地味な改暦というテーマを、かくも魅力的なエンターテインメントに仕上げた作者の努力と力量には頭を垂れるほかない。

そして、そのストーリーテリングもさることながら、多彩なキャラクターの魅力も素晴らしい。特にえん。(ラノベで培われた?)そのツンぶりは豪速球。全編通してデレるのが1か所だけというのもポイントが高い(笑)。

唯一残念といえるのは、第6章5節以降。改暦に至るまでの出来事としても肉厚であり、また、春海のそれまでとは違う一面(実直一辺倒だった男が改暦に執念を燃やし、搦め手からも闘う)を描けたであろうに、淡々とまとめてしまっている。

その直前に起承転結の転を持ってきているので、まとめに入ったということかもしれないが、いかにもあっさりとしていてもったいなく(物足りなく)感じた。

とはいえ一級品のエンターテインメント作品であることは間違いなし。心から拍手を送りたい。

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