『人間はどこまで耐えられるのか』フランセス・アッシュクロフト(河出書房新社)読了

タイトルだけ見るとゲテモノ寄りにも見えるが、あにはからんや、素晴らしいサイエンスブック。

第1章 どのくらい高く登れるのか
第2章 どのくらい深く潜れるのか
第3章 どのくらいの暑さに耐えられるのか
第4章 どのくらいの寒さに耐えられるのか
第5章 どのくらい速く走れるのか
第6章 宇宙では生きていけるのか
第7章 生命はどこまで耐えられるのか

の7章構成だが、1~4章はいざという時の危機管理マニュアルとしても秀逸。実例を引きつつ人体のメカニズムを説明し、必然的に導き出される効率的な対処法を示している。

最近トレッキングに出かけるようになった自分にとっては、高さ・暑さ・寒さがもたらすさまざまな危険を解説している本書は大変ためになった。

そしてそればかりではなく、読み物としても抜群におもしろい。人間がどのようなドラマとともに困難を克服してきたのかは本当にワクワクする。

さらに6章以降では、熱水の中や極寒の地で生きている信じられない生命たち(このあたりは新しい知見はなかった)についても触れられており、知らない人にとっては大変興味をそそる内容になっている。

俺は図書館で借りたんだけど、読み終わると同時にネットで注文した。オススメ。

ところで、つい先日の北ア遭難事故では、回収された遺体がTシャツや夏用のレインスーツ姿だったということで装備不足が指摘されていた。ところが続報では、ライトダウンやツェルトも用意した60L程度のザックを用意していたとのことで、準備に抜かりはなかったようだ。

キリマンジャロやアルプス登頂者もいるヴェテランがなぜ、という疑問の回答は低体温症。本書によると中度の低体温症(中枢温度が35℃を下回る)では、体が激しく震え、歩くのもやっとになる。言語は不明瞭に、思考は緩慢に、そして合理的な判断ができなくなる。雪の中で寝たいと思ったり、ザックが重すぎるから捨てようとしたり、寒さを感じないので服を脱ぎ始めることさえあるらしい。

先の事故でもおそらく天候の急変により、みるみる気温が下がり、様子を見ている間に低体温症に陥り、適切な対応が取れなかったのではなかろうか。

登山の先輩に対して失礼を承知で書くが、これは他山の石とするに格好の材料。

「ウェアの着脱は面倒臭がるべからず」

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