宅地建物取引士・登録実務講習

宅地建物取引士(宅建士)の登録実務講習についての体験記的なものが、Web上にそれほどないのでメモしておく。講習が民間に開放され、スクールごとに結構違いがあるようなので、ヴァリエイションの一つとして、誰かの役に立つこともあるだろう。なお、受講したスクールでは特に守秘義務等は課されなかったが(当たり前だけど)、具体名は避けておく。

登録実務講習とは

宅建士は、試験に合格した上で、2年以上の実務経験があるか(宅地建物取引業法施行規則第十三条の十五)、国交省が実務の経験を有する者と同等以上の能力を有すると認めれば(宅地建物取引業法施行規則第十三条の十六)、登録が可能となっている。でもって、同条一号で、国交省が認めた「登録実務講習」を修了すれば、後者に該当するとされている。

というわけで、登録実務講習とは、「2年以上の実務経験がない者が宅建士登録をするのに必要な講習」ということになる。

講習の流れ

俺が申し込んだスクールでは、「DVDとテキストによる自宅学習」と「スクールにでの講師による講義(スクーリング)」の2ステップとなっている。おそらくこれは法律で定められてるものと思われる(前項で調べる気力が尽きた)。

スクールのWeb申し込みフォームでは、1か月程度前の自宅学習が必要とのことだったので、その案内に従い申し込み、ちょうど1か月前に送付物が届く。

送付物

送付されてきたのは「テキスト」「資料集」「DVD」「通信課程問題」と各種注意事項等。まず注意事項等の冊子を読むと、一切の遅刻・中抜け・早退は即失格、居眠りも失格、講義中に携帯電話は電源OFFで操作しても失格となかなか厳し目のことが書かれている。このあたりは腐っても法律で定められた講習だなと感じる。

自宅学習

テキストは2~300ペイジ、資料集はその半分、DVDは3時間というヴォリューム。テキストの内容としては、ある中古物件の売却をその受付から引き渡しまでシミュレイトしたものを中心に構成、資料集はその取引にまつわる各種資料(登記記録・住民票・ブルーマップetc.)で、DVDはテキストに沿って、取引の内容を概説したものだった。

まずテキストから入る。個人的には、実務において、物件の特定だとか契約書面の記述だとかの話は慣れてるのでスムーズに読み進められたが、実務経験のない人は初見ということも多いだろうし、独学ではよく判らないところもあるかもしれないという印象。逆に、俺の場合はちょくちょく出てくる法令上の制限の細かい部分(斜線制限の数値とか日影規制の対象地域とか)をすっかり忘れていた(宅建試験に合格したのはもう何年も前)けど、試験に合格してすぐ受ける方は、このあたりはまだ記憶が鮮明だろう。ただ、法令の話とかは忘れかけとはいえ宅建試験の範囲内だし、実務部分は馴染みがあるしで、宅建試験勉強のように一から覚えないといけない部分や「知らなかった!」といった内容があまりなかったので、通読は楽だった。

テキストを一通り終わってからDVDを視聴。スクーリングでは、テキストの取引事例をもとに、実際に重説(重要事項説明書)や売契(売買契約書)を書いてみる作業をするようで、その際、戸惑わないように全体像を掴んでおいてもらう、といった内容だった。テキストで判らなかった部分もこれを聞いて判った、という人もいるかも知れないと感じた。そしてもう一点、今回、こういう動画での講義というものを初めて見たんだけど、これ相当いいな。判ってる部分は早送りで見られるし、よく判らなかったり聞き逃したりしたときは早戻しで簡単に確認できるので、ながら作業とかでも結構質の高い勉強ができる。ぜんぜん知らなかったけど、アリだな、これ。

一通り勉強が終わったので「通信課程問題」に着手。修了試験は○✕問題が20問、記述問題が20問で、双方8割以上正解で合格という設定。その○✕問題の模擬試験という感じ。取り組んでみたところ、60問中2問間違い。微妙にひっかけと言えるかなというものもあったが、常識で答えられたり、問題文の書き方で正答できるレヴェルの問題も多い。法律の細かい数値等を問う問題はなかったので、おそらくそういう問題は出ないんだろうと解釈。これで気分がだいぶ楽になる。

その後、スクーリング1週間ほど前から、念のため、テキストをもう1度斜め読み、問題集を復習、DVDを(ながらで)もう1回視聴したうえで、スクーリング当日を迎える。

スクーリング初日

遅刻厳禁との注意があったので、集合時間に30分以上の余裕を持って到着。ところが集合時間から20分はガイダンスで、その間に来てもお咎めはない模様。それどころか2日目はそんなに早く来なくてもいいよと講師がアナウンスする始末。

受講生は17人。が、COVID-19対策ということで、50人以上入る教室で、相当距離を保ちつつ着席。そのときは「ラッキィ」程度だったが、この恩恵は想像以上に大きかった。スクーリングは講義時間だけで1日7時間、10分休憩や昼休憩を含めると、ほぼ1日過ごす感覚なので、これで席が詰まっていたら、相当ストレスだったと思われる。

講師は非常に物腰の柔らかな男性。まず最初に修了試験については、きちんとスクーリングを聞いていれば受かる、そして試験に出るポイントはそのたびにはっきり伝えるので、それ以外の部分は興味のあるところだけ聞いておいてくれればいい(!)と、ちょっと個人的には驚きの発言が。ただ、「○✕問題集」については、設問と解答を確認しておいてほしいとのことばがあったので、まあ相当似通った問題が出るのかなという推測はされた。

そして講義の最初に「登録実務講習演習ワークブック」という50ペイジほどの冊子が配られる。これはテキストの設定事例をもとに作成された重説と売契が主になっており、ところどころ空欄になっている。講義を聞いて手を動かしながら空欄を埋めていくということだろう。

そこから講義が始まったけど、講師は自らの経験を交えつつ(すでに引退しているが、もちろん不動産業経験あり)、テキストを進めていく。個人的にはこういう講義の講師には当たり外れのある印象があるんだけど、特に判りにくい部分もなく当たりの部類だったのではないかと思う。どうしても退屈なところはあったけど、それは講師のせいというより、テキストの内容だったり、俺が知っていることだったりという部分が大きかった。

また、修了試験の○✕問題において出るポイント(と明言はなかったかもしれないが、明らか)をマークするようにとの指示もある。それらポイントは「通信課程問題」で問題として出ていたものがほぼすべて。どの部分をどのような表現で問うてくるかは当然本試験では違うだろうけど、やはり数値的なもの等細かい部分はなかったので、安心は深まる。

結局テキストの半分進まずに終了。2日目は、初日にはほぼ使用しなかったワークブックに実際に記入していく作業が増えるので、初日ほど退屈ではないだろうとのこと。

スクーリング2日目

前日に集合時間に関するアナウンスがあったので、ゆっくりめ(それでも念のため講義開始の20分前)に到着。なんの問題もなし。

講義はスピードアップ。テキストを流しながら、試験ポイントのマーク指示が続く。本日講義時間の1/3が過ぎたあたりから、ワークブックの重説と売契への記入作業が始まる。資料集にある各種公簿から正しい数字を正しい場所へ写経するのが主。それぞれの資料の読み方が判っていればかんたんなお仕事なんだけど、油断していると写し間違えることもあるので、注意は必要。実務だとシャレにならないところだし。また、設定事例に書かれている内容を読み取り、日時や金額等も記入。このあたりはいちおう(最低限の)国語力と重説と売契の文言・書き方を理解している必要があるだろう。以下、書いてはテキストで答え合わせとかんたんな解説、を繰り返し、両書面を完成させる。そして修了試験の記述問題は、ワークブックと同様、重説と売契の穴埋めだという説明がある。テキスト・資料集・ワークブック持ち込み可なので、契約書の文言等が出題された場合はそちらを見ればよい(ただし出題はないだろうとも)ので、公簿や事例の内容をきちんと読み取るようにとの注意がある。最後に残っていたテキスト部分のマーク指示があり、講義が終了する。

修了試験

まずはガイダンス。受験番号のマークがことのほかややこしく、丁寧な説明がある。試験時間は60分で、開始後20分以降終了5分前(たしか)の間は途中退出可能といった案内等も受けてから試験開始。

まずは○✕問題。当然ながら(?)講義でマークした場所から出題される。問題文の作りも通信課程問題と酷似。さすがにヴァリエイションはあったが、もしかすると同じことを訊いていた問題もあったかもしれないレヴェル。予想通り、細かい数字も問われず(問われてもテキストを見ればいいんだけど)特に詰まることなく回答完了。

次に記述問題。予告どおり重説と売契の穴埋め(条文等の穴埋めはなく、表部分のみ)。問題に付属している公簿のサンプルと事例についての説明文を見ながら、適切な数値・文言を記入。公簿については、読み方に慣れていない人が脳死で数字を写したりすると間違えそうな部分(例えば土地は分筆されてるので、下線が抹消記録だということを理解していないと、パッと目に入った最初の数字を転記してしまうとか)もあったりしたが、実は試験の直前、読み方等で注意しなければいけない部分というのを改めて復習していた。このあたりも親切設計。

開始10分程度で最後まで解き、問題用紙に書いていた解答を解答用紙に転記。解答確認とマークミス・記入漏れを2周チェックして、25分ぐらいで提出。なお、提出の際は挙手をすると、講師が回収に来てくれるんだけど、その際、名前の記入漏れや受験番号のマークミスがないかチェックしてくれていた節があった。このあたりも安心設計。そして問題含めて回収され、退室。あとは2週間弱で結果が発送される。

総括

  • 登録実務講習は法律に基づいたものなので、基本的には厳格に規定されているが、実際には落とすためのものではないという姿勢が色濃くにじみ出ていた。
  • テキストとDVDに関しては、実務に携わっている場合は、正直予習の必要はない。実務未経験者については、スクーリングだけでも十分理解得できるとはいえ、流し読みでいいので、テキストは事前に通読し、DVDも見ておくことを推奨。
  • 「通信課程問題(○✕問題集)」は修了試験までには必ずやっておく(ほかの実施機関でもあるのかは判らないけど、おそらくあるんじゃないか)。そして、テキストの該当部分を読んでおく。これで○✕問題はほぼ間違いない。
  • 記述問題は、公簿類の読み方、重説と売契の項目内容が判っていれば問題なし。
  • というわけで、試験については過度な心配はまったく不要。繰り返しになるが、「通信課程問題(○✕問題集)」だけはやっておくべし。
  • あとは、遅刻・居眠り等に気をつけて、丸2日間(話によると、7:30~22:30で1日でこなす常軌を逸したスケジュールもあるとか……)きっちり通えば、まず大丈夫のはず。

(追記)

長文を合間合間に書いてるうちに、合格発表が届いた。点数等は記載されていないので、試験成績は不明。

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